以前、あるお寺のご門徒さんから「○○病院で父が亡くなった時病院側に『この病院からは○○葬儀社(大手葬儀社)でないとご遺体を搬送させることができない』と言われ仕方なく言われるままにしたら、そのまま葬儀まで依頼せざるをえなくなってしまった…。どういうことなのですか?」という質問を受けたことがありました。
葬儀社の間では、○○病院はA葬儀社、△△病院はB葬儀社とC葬儀社…
という事をある程度はわかっています。
なぜ上記のご門徒さんが「この病院では○○葬儀社だけ…」と病院からストレートに言われたのかはわかりませんが、この場合「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(独占禁止法)」に違反することになります。
(2社・3社の中から…となっても同じです)
図のように病院側に年間で1000万とも2000万とも言われる多額の寄付や接待で病院に出入りする“院内搬送”が許可されます。
“院内搬送”とはなんの事かといいますと「亡くなられた方を病室から霊安室に運ぶ」ことです。「病院の中だけを搬送する」となると独禁法には該当しません。
金銭の流れを除き、このような仕組みは病院側に取っては便利なのです。
1. 亡くなられた入院患者の御遺体の処置に人員が必要ない
(院内搬送の葬儀社がやってくれる) 人件費削減
2. すぐに空きベットを作れる
(回転数の増加)
3. 院内搬送業者が仕事をとれた場合、謝礼金(紹介料)が貰える
親族が依頼した葬儀社が病院に着いていても、搬送を遅延させ親族をイライラさせ横取りをする場合もあります。
(以前、病院に着いてから「(院内搬送の)担当者が来ないから」と延々と待たされ、1時間後にやっと院内搬送が始まった事がありました。その時、その担当者は車の中でタバコを吸ってまったりとくつろいでいました。)
葬儀社の院内搬送担当者は、病院で葬儀を受注できるとプチボーナスが出ます。
なので葬儀社が決まっていたりした場合はやる気がなくなるのです。
では、病院内のみの搬送で葬儀社にはなんのメリットがあるのでしょうか?
院内搬送のメリットは…
1. 葬儀社の決まっていない家族に一番最初に近寄れる
親族が悲しみに暮れる中、親切な対応、話し方で近寄れば仕事を獲れるチャンスとなるわけです。
2. 強引にでも搬送に押し切りやすい
病院に「○時までにご遺体を搬送してくれ」と時間制限を取り付けさせてしまえば、「時間がないから仕方ない…」となり、葬儀を受ける事ができることもあります。
3. 葬儀社が決まっていても横取りができる可能性がある
上記の院内搬送を行っている葬儀社すべてが…とは言いませんが、葬儀の費用はかなり高額です。年間で寄付金やら接待費やらの支出分を取り戻そうとするには、葬儀費用を上げるしかありません。
「病院で葬儀社まで紹介してくれて…親切だった」ではなく、「高額な金が絡む話、商談にまんまと乗せられた」と考える方が自然かもしれません。
「搬送くらいなら…」と搬送を依頼してしまった場合、強引に葬儀まで押し切られてしまうこともあります。また葬儀は断れたとしても、搬送料金が異常なほど高いなど、あまり良心的ではないと思います。
とある寺院からの話ですと、勝手に葬儀社の保管庫に搬送し高級棺に入れて、請求が100万円近くだったご門徒さんがいたそうです。